日本伝統工芸品販売
私たち錫光は、設立してまだ30有余年の小さな工房です。しかし、受け継いできた技術は、はるか昔からの伝統的なものです。こういった技術は一度途絶えたら再現するのに大変な時間と労力がかかることを自覚しています。また、「現代の名工」(先代光山)の技術を間近で見、学んだという自負があります。その記憶が冷めやらぬうちに、自分自身は一歩でも先代に近づくための努力を惜しまない。また、次世代へ「現代の名工」の技をそのまま引き継いでいきたいという思いがあります。 私たちは、2087年までに、もう一人の「現代の名工」を輩出する工房になることを目指します。これは、今は大変な大風呂敷を広げた話に聞こえます。目標にすること自体おこまがしいことだと思います。しかし、目標を思い切って高く設定することで、それを実現するために今、何をなすべきかということが自ずと明確になるものと確信しているのです。
錫光の初代・中村光山(こうざん)は、「現代の名工」として表彰された名匠。錫光の現当主である中村圭一氏は、中村光山の子息になる。錫師として遅いスタートを切った圭一氏は、父・光山に師事するが、自身で想像していた以上の労苦を重ねながら日々研鑽を積んできたという。錫器は鋳型で成型した後、鉋(かんな)と呼ぶ独自の道具で轆轤挽き(ろくろびき)して形を整えて仕上げるが、鉋を思うようにコントロールできるようになるまで特に苦労したそうだ。錫光の工房には、額装された書が掛けられている。そこには先代の筆で「次百(つくも)」とある。次百には、“現状に満足せず、次の百点を目指して常に精進せよ”というメッセージが込められている。ものづくりに向かう崇高な精神と卓越した技を間近で見てきた圭一氏は、錫光から、もう一人の現代の名工を輩出することを一つの目標に据えている。引き継がれた次百の精神が、技、そして人を磨いている。
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